会社から帰宅して鍵を挿しこもうとしたとき、私は妙な違和感に気づいた。あれ、鍵穴がいつもと違うような…。まあ、いいか、とりあえず中に入ろうと鍵を挿しこんで回すと、鍵が閉まってしまった。アレ…?何だか嫌な予感がして鍵を開けると…一瞬入る部屋を間違えたんじゃないかと思うくらい、部屋の中はめちゃめちゃだった。現実を受け入れられるまでにどれくらい時間が経ったのだろう…泥棒だ、と思った瞬間、悪寒がゾクゾクと背中を駆けぬけ、大きな悲鳴を上げたのだった。
それから警察の人が来て、指紋とか色々調べてくれた。そして警察の人曰く、うちのドアはピッキングされたとのこと。鍵は一つ、もう一つダミーもついているのだが、見抜かれてしまったんだろう。私が最初に抱いた違和感は、鍵穴に針金で引っ掻いたような跡が残っていたからだった。私は日頃からカード通帳類は全て持ち歩いているので、金銭的な被害はなかった。ただ、下着がごっそり盗まれてしまっていた。私の下着を盗んでどうしようというのだろう…再び悪寒がゾクゾクと背中を駆け抜けた。
気持ち悪くなったので、そこから引っ越すことにした。そして新しいマンションは、家賃が少し高いのが痛いけれど、防犯対策がちゃんとされていて、女性の一人暮らしが多いそうだ。鍵も知人が勧めてくれたCP-P対応のものにした。だけど二度とピッキング被害に遭わないために、私が選んだ鍵、それはドアの内側につける電子ロックキーだ。メインではなく補助錠として使う予定だが、それはリモコン操作で開け閉めできるので、もしCP-P対応のものがダメだったとしても、この補助錠がある限り、ピッキングは不可能だ。
命もお金も無事だったことを喜び、失ったものは勉強代だと思うことにしよう。これからその経験を活かして、安全に暮らしていけることの方がずっと大事だ。